不完全こそ、美しい ――海外の人が語った“wabi sabi”に教えられたこと
2025.08.28
「日本の“wabi-sabi”って、聞いたことある?」
「いや、知らない」
「“wabi-sabi”はね、“一時的”とか“不完全”なものの中に、美しさを見いだすという日本の美意識なんだって」
そんなやりとりが、とある海外のポッドキャストで紹介されていました。
英語で語られたその感覚に、なぜか心がふっと和らぐような気がしたのです。
“それって、私たちにとっては当たり前だったかも”
そう思ったと同時に――
「わびさび」という言葉の奥に流れていた静かな美しさを、あらためて見つめ直したくなりました。
1. わびさびって、どんな美意識?
「わびさび」は、日本独自の美の考え方。
「わび」は、質素で控えめなものに宿る趣きや、足りなさの中の豊かさ。
「さび」は、時を経て古びたものに漂う、深い静けさや風格。
どちらも、“整っていないこと”や“派手ではないこと”を、
むしろ美しいと感じる心から生まれています。
たとえば――
ちょっと歪んだ陶器、色褪せた木の器、雨に濡れた石畳。
そんな、時間とともに表情を変えたものに、ふと心を奪われる瞬間。
それが、わびさびの美しさなのかもしれません。
2. 完璧じゃないから、惹かれてしまう
少しヨレたお気に入りの服や、カバーがすり減った本。
なぜか手放せないのは、そこに自分だけの記憶や時間が染み込んでいるから。
西洋では、対称的で整った美しさが好まれる傾向もあります。
でも日本には、「不揃い」「余白」「静けさ」といった、
完成されすぎていないものの中に魅力を感じる文化が、ずっと息づいてきました。
“足りなさ”を否定せず、“そこにあるもの”をそのまま愛でること。
それが、わびさびという価値観の芯にあるのです。
3. 恋もまた、不完全だからこそ愛おしい
恋愛も、どこか似ています。
完璧に見える人より、少し不器用だったり、隙があったり――
そんな人にこそ惹かれてしまうこと、ありませんか?
「ここがちょっと苦手だけど、まあ、これもその人らしさか」
そう思える瞬間に、恋は少しずつ“愛”へと育っていくのかもしれません。
自分に対しても同じ。
弱さや欠点を抱えたままでも、大切にされていい。
“完璧じゃなくても、愛されていい”と、心のどこかで許せるようになるとき、
恋はやさしさに変わっていくように思います。
4. ふだん見過ごしていた美しさに、目をとめる
便利で新しいものに囲まれていると、
ときどき、手作りのものや、少し欠けた風景に、
どうしようもなく心惹かれることがあります。
それは、わびさびの美意識が、
私たちの暮らしの奥深くに、静かに根を下ろしているから。
うまくいかない日も、
がんばれない朝も、
まっすぐ進めない恋も――
そのすべてが、“ちゃんとしていない”ことを責める理由ではなく、
誰かと分かち合える優しさの入り口になるのかもしれません。
欠けているからこそ、美しい。
不完全だからこそ、愛おしい。
そう思えたとき、
自分のことも、誰かのことも、
少しやわらかく見つめられるようになるのかもしれません。
“wabi sabi”という静かな感性が、
今日のあなたの心にも、そっと灯りますように。