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第二十三項 毘沙門天(びしゃもんてん)

2023.09.10

コメッターの皆様、茉途衣です。
本日は、毘沙門天(びしゃもんてん)のお話です。

毘沙門天はどんな神様?
東大寺大仏殿の多聞天立像
古代インドからの長い歴史を持つ神様です。インドから中国を経て日本にも根付いた毘沙門天の意味と歴史、その姿の特徴を知れば、どんな神様なのか見えてきます。
毘沙門天の意味と歴史
少し変わった名前にはどのような意味があるのでしょうか。
毘沙門天神は、古代インド・ヒンドゥー教で「クベーラ」と呼ばれていた神様がもとになっています。別名を「ヴァイシュラヴァナ」と言い、これを漢字で表すと「毘舎羅門(びしゃらもん)」に、それがさらに変化して「毘沙門」となりました。

ヴァイシュラヴァナには、「すべてのことをいっさい聞きもらさない知恵のある者」という意味があります。また、毘沙門天の「天」は天界に住む者の総称である「天部」を指します。

毘沙門天は、古代ヒンドゥー教で金運と福徳の神様だったことを引き継ぎ、日本でも財福の神様として信仰されることがあります。また、仏教を守るという強いイメージから、戦いや勝利の神様として、鎧を身につけた武将の姿で表現されるようになりました。その他、疫病を祓い無病息災を願う神様として、毘沙門天を祀っているお寺や神社もあります。
毘沙門天の姿
武神として知られているように、日本の仏像で見られる毘沙門天の姿は武装しているものがほとんどです。顔も戦いの神様らしく、相手を圧倒する迫力ある表情をしています。右手に宝棒(ほうぼう)と呼ばれる武器、左手に仏舎利(ぶっしゃり)が納められた入れ物の宝塔(ほうとう)を持っている姿がスタンダード。右手で持つ宝棒で邪鬼を追い払い、左手で持つ宝塔で豊かさを授けると言われています。とはいえ、毘沙門天像の表現はさまざまで、ポーズもすべて同じではありません。宝棒と宝塔を持つ手が逆のものや、武器を持っていない像もあります。

毘沙門天像の多くは、邪鬼と呼ばれる鬼形の者の上に乗っています。迫力ある毘沙門天にばかり目がいきがちですが、この邪鬼も表情は豊か。苦々しい顔をしているものから、口角を上げてニヤリとしているものまであります。邪鬼の表情も面白いので、時間があれば足元にも注目してみてください。

日本で見られる有名な毘沙門天像は、東大寺大仏殿の中門に立つ兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)や、国宝に指定されている京都・鞍馬寺の毘沙門天三尊立像などです。
毘沙門天のご利益
主な毘沙門天のご利益は、金運・開運・商売繁盛・勝運(合格祈願)・健康長寿・厄除など。さらに毘沙門天には、信仰すると得られる10種の福があります。これは「毘沙門天王功徳経(びしゃもんてんのう くどくきょう)」というお経に書かれているものです。

<10種の福>
①無尽の福(尽きることのない福)
②衆人愛敬の福(皆から愛される福)
③智慧の福(智慧により物事を正しく判断する福)
④長命の福(長生きする福)
⑤眷属衆太の福(周囲の信頼に恵まれる福)
⑥勝運の福​(勝負事に勝つ福)
⑦田畠能成の福​(田畑を豊作に導く福)
⑧蚕養如意の福(家業が成功する福)
⑨善識の福(良い教えを学ぶ福)
⑩仏果大菩提の福(悟りを得られる福)

この功徳(ご利益)を得るため、神様に捧げる言葉である真言(マントラ)を参拝時に唱えます。毘沙門天の真言は「オン ベイシラ マンダヤ ソワカ」で、これを3回、7回、21回、108回唱えると良いとされています。
毘沙門天は「四天王」「十二天」「七福神」の1人
七福神が掘られた石像
インドや中国で崇拝されている毘沙門天は、日本でもさまざまな神様のチームに属しています。ここでは、「四天王」「十二天」「七福神」の1人としての毘沙門天にフォーカスして紹介します。
「四天王」と毘沙門天
四天王とは仏教世界を守護する4人の神様のこと。それぞれ東西南北の方角に分かれて護衛にあたっており、毘沙門天はその中の「北の守護神」を担っています。
単独で祀られる場合は毘沙門天ですが、四天王の1人として数えられるときは「多聞天(たもんてん)」と呼ばれます。これは、お釈迦様の教えを一番多く聞いていた、という逸話からきているようです。また、四天王の中で最強とされる毘沙門天は単独で祀られています。

<四天王>
東:持国天(じこくてん)
西:広目天(こうもくてん)
南:増長天(ぞうじょうてん・ぞうちょうてん)
北:多聞天
「十二天」と毘沙門天
十二天は仏法や仏教徒を守る12人の神様。密教では、四天王とともに重視されています。東・西・南・北・東北・東南・西北・西南の8方角を守護する8人の神様と、天地を守護する2人の神様、日月を守護する2人の神様を加えた12人がこの十二天です。

毘沙門天は四天王のときと同じく、十二天でも「北の守護神」を務めています。日本では仏教の神様として知られる十二天ですが、そのルーツは古代インド神話の神々。この神々が仏教に取り入れられたことで、仏法を守護する神様になりました。

<十二天>
東:帝釈天(たいしゃくてん)
東南:火天(かてん)
南:焔摩天(えんまてん)
西南:羅刹天(らせつてん)
西:水天 (すいてん)
西北:風天(ふうてん)
北:毘沙門天
東北:伊舎那天(いざなてん )
天:梵天(ぼんてん)
地:地天(じてん)
日:日天(にってん)
月:月天(がってん)
「七福神」と毘沙門天
毘沙門天は神社やお寺によくある「七福神」の1人でもあります。七福神は「清廉、有福、威光、愛敬、人望、寿命、大量」の7つの福を、国や人々にもたらすために集まった7人の神様。毘沙門天は7つの福に含まれる、人を従わせ恐れさせる力である「威光」を意味します。七福神の1人として祀られる場合でも、特別に毘沙門堂(個室?)をあてがわれることが多いようです。また、お堂には狛犬の像ではなく、毘沙門天の使いと言われている虎の像が備えられています。

<七福神>
恵比寿(えびす)
大黒天(だいこくてん)
福禄寿(ふくろくじゅ)
毘沙門天
布袋(ほてい)
寿老人(じゅろうじん)
弁財天(べんざいてん)
毘沙門天の御朱印があるお寺
御朱印帳に文字を書く手元
毘沙門天がご本尊として祀られているお寺では、毘沙門天と書かれた御朱印がもらえます。ここでは、代表的なお寺をいくつか紹介します。
毘沙門天の御朱印があるお寺①善國寺(東京)
善國寺(ぜんこくじ)は1595年に創建された、東京・神楽坂にあるお寺。ご本尊として祀られている毘沙門天は江戸時代から「神楽坂の毘沙門さま」として信仰され、新宿山ノ手七福神の1つに数えられています。毘沙門天の信仰と縁深い虎を大切にしており、境内には石でできた虎の像があります。

こちらは日蓮宗寺院なので、御首題帳を持っていれば「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」と書いてもらえるようです。
毘沙門天の御朱印があるお寺②神峯山寺(大阪)
約1,300年の歴史を持つ神峯山寺(かぶさんじ)は、日本で最初に毘沙門天が安置された霊場と言われています。このお寺には3体の毘沙門天像があり、縦に祀られているのが特徴。 手前から毘沙門天、双身毘沙門天、兜跋毘沙門天で、3体すべてが神峯山寺のご本尊です。こちらには、毘沙門天の姿が描かれた御朱印帳もあります。

毘沙門天の御朱印があるお寺③大岩山毘沙門天(栃木)
京都の鞍馬寺(くらまでら)、奈良の朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)と並び、日本三毘沙門の一寺として有名な大岩山毘沙門天(大岩山多聞院最勝寺/おおいわさんたもんいんさいしょうじ)。聖徳太子が作ったとされる毘沙門天の純金像がご本尊として祀られています。「御本尊毘沙門天」と書かれた御朱印の他、毘沙門天の姿が描かれた御朱印がもらえます。また、毎月1日には白蛇の神様である「叶権現」の御朱印が登場します。
毘沙門天の功徳と魅力に触れて
綺麗に咲く花
古代インドから続く長い歴史の中で、中国を経て日本へと信仰が広がった毘沙門天。ここで紹介しているのは代表的なお寺であり、日本各地には毘沙門天の多面的な魅力に触れられるお寺や神社が他にも数多くあります。いろんなエリアにあるので、定年後の御朱印めぐりのテーマに良さそうです。
また、毘沙門天ゆかりのお寺での葬儀は、故人にも遺族にも参列者にも特別なご利益が授けられそうですね。

真言:オン ベイシラ マンダヤ ソワカ

最強の軍神、金運の毘沙門天、かっこよくてフィギュアとして集めたくもなります。
自分自身の弱さを感じた時こそ唱えてみてくださいね。

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