「聞いてほしいことがあるんだ」
そう言われて話を聞き始めたら、想像以上に重たい過去の体験が一気にあふれ出てきた。
「大丈夫だよ」と支えたい気持ちと、
心の奥で少し苦しくなる気持ちが同時にやってくる。
そんなすれ違いを、心理学では“トラウマダンピング”と呼ぶことがあります。
1. トラウマダンピングとは?
トラウマダンピングとは、
自分が経験した強いストレスや心の傷を、
相手の準備に関わらず一気に吐き出してしまうこと。
決して悪気があるわけではなく、
「やっと話せる」と安心したときや、
「誰かにわかってほしい」という気持ちが溢れたときに自然と起こります。
2. なぜ起きてしまうのか
信頼している人の前では、心の防御が外れてしまうことがあります。
「本当はこんなことがあって」と言葉が止まらなくなるのは、
それだけ相手を大切に思っている証でもあるのです。
一方で、相手の心の状態に関わらず突然投げかけてしまうと、
受け取る側が消耗してしまうこともある。
それが「トラウマダンピング」と呼ばれるゆえんです。
3. 受け取る側の気持ち
大切な人の力になりたい気持ちは本物。
でも、重たい話を立て続けに聞くと、
自分まで気持ちが沈んでしまうこともあります。
「聞いてあげたいのに、苦しい」
そんなふうに感じるのは、冷たいからではなく、
人として自然な心の反応です。
4. お互いを守るための工夫
トラウマダンピングを避けるには、ちょっとした工夫が役立ちます。
・話すときに「いま少し聞いてもらっていい?」と一言添える
・聞く側も「今日は余裕がない」と伝えてもいい
・全部を一人に背負わせず、必要なら専門家に頼る
こうした小さな工夫が、話す側と聞く側のどちらも守ることにつながります。
トラウマダンピングは「わがまま」ではなく、心が助けを求めているサイン。
ただ、その重さを一人だけで抱える必要はありません。
安心して話せる相手は大切にしながらも、
境界を意識することで、関係はより健やかに育っていきます。
あなたの心も、相手の心も。
どちらも大切にされていいのです。
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